(2017.11.03)

カムイノミ

 アイヌとは、アイヌ語で人間という意味です。アイヌ民族の伝統的な考え方では、人間生活に関わりのある動植物や、人の手の及ばないもの、風や雷などの自然現象には、人間と同じく魂のあるものととらえ、それらの存在をカムイと考えています。
 カムイは、クマやオオカミ、火や水のほか、疫病のように人に害を与えるものも含まれます。カムイは神と訳しますが、唯一絶対の神ではなく、目の前に10頭のクマがいるとすれば、人がそれぞれ魂を持つのと同じく、10のカムイがいることになります。また、カムイは人と同じく間違いを起こすこともあり、そのことで人間から怒られたりと、非常に身近な存在であります。

  人間が生活していくためには、カムイとの良好な関係がなくてはいけません。そのために人の希望や感謝を述べる行為がカムイノミと呼ばれています。火のカムイは、最も身近で重要です。人が食べ物を調理したり暖をとったりと、火は必要不可欠な存在なのです。カムイノミでは、火の神に向かって祈りが述べられます。火のカムイ「アペフチカムイ」は、人間の言葉をカムイの言葉に訳して、それぞれのカムイに伝えてくれます。
 人間はカムイの恵に感謝し、酒や食べ物、イナウを捧げ、カムイはそれに応えて肉や毛皮などを与えてくれます。イナウとは、ミズキやヤナギで作ったカムイへの捧げ物で、カムイの世界ではミズキのイナウは金に、ヤナギのイナウは銀になると言われています。

キとは

キは漆塗りのお椀のようなもので、通常儀式で使うときは、下に天目台のようなタカイサラと呼ばれるものがつけられます。カムイノミでは、イクパスイと呼ばれる木彫りの入ったヘラの先に酒をつけ、それを火に垂らしながらイノンノイタク(祈り言葉)を捧げるのです。また、囲炉裏から離れたところに組まれたヌササン(祭壇)には、フクロウやクマ、水や大地といったカムイに捧げられるイナウが立てられ、そこでも祈りが行われます。人がカムイに礼を尽くせばカムイは人間に恵みを与え、見守ってくれる。そのような信頼関係でアイヌ(人間とカムイは結ばれているのです。


チャランケ祭に捧げられる主なイナウ
ヌサコ カムイ (祭壇の神)
ワッカウシ カムイ (水の神)
シリコ カムイ (森の神)
コタンコ カムイ (村の神)
キムン カムイ (熊の神)
チワ カムイ (渚の神)

儀式の進行
(1) 祈りを行う
(2) シントコサンケ。儀式で使用するトノトの品定め。男性ふたりで行う。ふたりのうちひとりがトノトの味を定め、参列者にトノトの出来を報告する。よいトノトであれば「ピリカトノト」という。
(3) トキ(酒杯)、イクパスイ(捧酒箸)が、参列者に配られる。イヨマレクル(捧酒役)が、トノトを祭司であるエカシにまず注ぎ、その後全員に注ぐ。
(4) イヨマレクルの「イヨマレピリカ」という参列者にトノトを注ぎ終わりました、という報告ののちカムイノミがはじまる。イクパスイをトウキのなかに軽く浸してトノトをつけ、その滴をアペフチカムイに捧げる。
(5) 祈りが終わったあとのトノトは、参列者のうしろに控えている女性にまわす。
(6) イナウセシケ(イナウの完成)をする。それぞれのカムイごとに決められた担当者が、イナウの帯(イナウクッ)をほどき、ほどいた帯をイナウに締め直す。
(7) イチャルパ(先祖供養)。女性たちが中心となり、イナウと供物を捧げ先祖の霊に祈る。
(8) 最後に炉に立てておいたアペフチカムイのイナウを燃やすことでイナウをアペフチカムイに捧げたことになり、全員でオンカミ(礼拝)をして儀式は終了する。

2014年チャランケ祭与論島編でのカムイノミ

2006年中野北口広場でのカムイノミ

文=平田篤史/聞き取り=広瀬敦子

写真=チャランケ祭実行委員会(2016)古賀加奈子(2015)、

春田倫弘(2005)、浮田洋子(2006)
※あしびなーに保管されていたアルバムから紹介させていただきました。